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詩【世界の美しさ】

世界の美しさなぞ歌う前に

世界の有り様なぞ言う前に、

お前が握りしめている拳を開いて見せよ。

誰も、お前の事など信じやしない。

自らの生活を嘆く前に

自ら招いた不幸にとどめを射される前に

お前は自らの言葉を、

自らの耳で聴くのだから、

神など居なくても、

居直りや、自己欺瞞などせずとも

お前はお前を裁くのだから、

誰も何も言わないままに

誰も居ない部屋で、

どことも知れぬ時代の誰とも分からぬ自分のままで

縊れて果てる自分を見るのだ。

世界がどんなに美しかろうと

世界がどんなに醜かろうと

それと、お前は別のもの。

だから

私と世界は切り離されて

私は私を、裁くのだ。

詩【僕は、しない】

しない。

何もしない。

したい事以外、しない。

やりたいことは、

きかれても、さあ困ってしまう。

したくないんだ。

しない、やらない、お断り。

したい、やりたい、喜んで。

は前向き、自発的、仕掛けた生き方

だとして、

そうだとして、

「やりたくない」は受け身かね?

「めんどくさい」は無意味かね?

しない、できない、やりたくない。

できないやらない絶対に。

明瞭に。

 

断じて!!

詩【形骸】

肉体が精神の乗り物だと

言うヤツがいて、

肉体は内面の外化だと

言うヤツもいる。

何でも安易に信じてしまう罰に

僕は自分の

肉体が

いつまで、自らの精神を煩わせるのか、訝しむ。

胎内に置き忘れたカカトを、

恋い焦がれて懐かしむが故に、

僕の精神が、懦弱だと、

きみは早とちりをする。

完全や不完全を言っているんじゃ無いさ。

元来の所有権を主張しているだけだ。

きみにはその違いが見えないか。

自由でありたいと云うのは、

例えば、この肉体から。

例えば、この記憶から。

例えば、この悔恨から。

何でも安易に断じてしまう癖が

僕の肉体を、

この精神の形骸と看做すのだ。

詩【抱擁】

怒りと痛みと、

シラケた気持ちと、死にたい熱望と、

理不尽と、不眠に

真っ黒に塗りつぶされた日常の中で、

風と、花と、星が、

生命の官能を呼び覚ますから、

幼い頃の、僕のひだまりで、

夢を食べて生きた幼い頃の僕の日だまりで、

あのひだまりで、

夢に溶けてしまえばよかった。

幼い僕自身に

哀しみを知らなかったあの時に、

はやく、すぐに、躊躇わず、迷わず、

息の根を止めてあげられるよ、現在(いま)の僕なら。

抱擁のなかで。

詩【夕闇の呼吸】

世界があって、僕がいて、

僕がいまいるこの世界が、なくなったことを想像したら、

悲しくなった。

この世界が、醜いのは、僕が吹き出物みたいに世界にしがみついているからで、

だから、

僕が居なくなった世界を想像したら、世界はとても美しくて、

静寂も、喧噪も、歴史も、嘘も、

何にもなくなった、世界が、

世界だけがある世界が、僕がいない、世界が、

美しくて、

僕は、余計者なんだと、知った。

いつもと違う、

同じ

夕暮れのこと。

詩【逆上】

落ちているのか、昇天しているのか、わからずにいる子ども。

身を裂く傷が額に残って、

「思い出」とやらに変わっても、

怒りの感情が負債だった。

奇跡とやらを、女は望んだ。

死んでなお、生きよという。

それは呪いだ、願いじゃない。

寂しさなどは知らずに、

やましさだけが育つ。

苦しさには不感症で、

悔しさだけが、きりきりと食い込む。

のぼっているにせよ、落ちているにせよ、

失ったものは、踵だけじゃないと知った時には、

その時には、

「時間」だけが、すべての、証で、

「過去」だけが、痛んだ。

詩【靴ずれ】

波がきて、

ひいていく、

ただその淡いに、

きみがわらう。

そら。

あおい。海よりあおい、そら。

風にあおが揺れるから、と、

それが可笑しいから、と、

きみが笑うから、

ぼくは、足の痛みを無視して、

きみの、横を、

あるく。

詩【冬の一輪】

唯物的な痛みが街を覆う。

死なんて、観念の遊びだと誰かは言うのに、
きみは、それでもその観念に拘っている。

拘束された感情が生活を積み立てる。
自由を貯金しながら、僕たちは年をとり、言葉を喰い散らかす。
誰にも同じ棘があって、抜き去れないモドカシさに手を焼くばかりだ。
この冬の寒さの中に。

前を歩く君の背中に、決定的な言葉を突立てたい。
振り向かないでくれ、何も見ないでくれ、言葉を、声を出さないでくれ。
花の幻を見たんだよ。

冬の乾いた街に咲く花など、造花のそれと違わない。

だけどさ、

だからこそ、

取り残されて咲き遅れて、
冷えきった街に咲く、
幻の優しさを、
信じて、みようか。

 

 

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